第2話 温泉の誕生に感謝

その後、社長がゴルフ練習場等を営む20,000坪の土地の片隅で温泉掘削工事が始まり、約4か月後、1500m掘削後に温泉が湧出しました。50℃をこえる熱い温泉です。

社長はニコニコして言いました。「感謝を皆さんにおわけしないといけませんな」

数日後、私が試験汲み上げを確認に現場へ出向いたところ、温泉井戸のすぐ隣にプレハブ小屋が建てられ中には家庭用のバスタブが一つ設置されています。

その中には、温泉が溢れるように注がれています。

これぞかけ流しです。

地下1000m以上の地球の圧力から開放された生まれたての温泉のエネルギーが、小さなプレハブ小屋の中に充満しています。

仕事を忘れて湧きたての温泉に入りました。

温泉臭さと熱気で気が遠くなり、すぐにノボセました。

まさに湯当りです。

本当にうれしかった。

完全に仕事と責任を忘れてしまいました。

それから数日、そこには近隣の人が噂を聞いて入浴にやってきます。

もちろん無料です。

「この温泉で子供のアトピーが治った。」「膝や腰の痛みがなくなった。」

「温泉はよく温まるわ~。汗が噴き出して来るわ」社長はニコニコしています。

ある日TV取材が来て、この様子がニュースで放映されました。

「都会の真ん中で温泉湧く!」「温泉に入ってカラダが治った!」

次の日保健所があわてて飛んできました。

「温泉法上では不特定多数の人に・・・・・・」

喜びすぎました。

保健所の担当者は言います。

「まだ温泉が湧出しただけです。温泉法ではポンプ設置や利用の許可を取ってもらわないと使っては困ります。」

社長は、「温泉が生まれたお祝いやがな。ご近所の皆さまにおすそ分けしているだけです。」

「お金を取っているわけやないです。」

「でも法律上・・・・とにかくお風呂は中止して下さい。」

社長の感謝のお祝い事は1週間ほどで幕となりました。

それでもTVを見た人は現地へ来ます。

「温泉が湧いているのはここですか?」温泉の効果を体感したご近所の人々は口を揃えて言います。

「ここの温泉はよう効くで~。」

「社長、早くお風呂を作ってや。ここの温泉は最高や。」・・・なるほど、さすが社長です。

この件は温泉法を知っていながら、社長と共有したあまりの感動とうれしさに試運転という形で何とかならないかなどと甘く考えていた私の責任です。

もともと入浴者は集まってきた近隣の方たちだけの少数だったのですが、日を重ねるうちにうわさが広まり、ついにはTVまで・・・・申し訳ありませんでした。

この時ひそかに私は思いました。「温泉はスゴイな~ 多くの人を感動させている」
歴史が始まった気がしました。

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